ジェフ・クーンズは椅子から立ちあがったところだった。興奮のあまり両腕を突き出している。クーンズと向かい合って、白い革のクッションの上でやや体を屈めたダミアン・ハーストは、何か反対意見を述べようとしているらしかった。クッションの一部には絹織物が掛けられている。ハーストの顔は赤みを帯び、表情は陰気だった。二人とも黒いスーツ―クーンズのスーツは細いストライプ入り―に白いシャツという姿で、黒いネクタイをしめていた。二人のあいだに置かれたローテーブルには、フルーツコンフィがはいった籠が置いてあるが、両者とも見向きもしない。ハーストはバドワイザー・ライトを飲んでいる。