2013年 01月 22日
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未完成の散文詩は、このように書き出されていた。それはきみと彼女の合作ともいうべき作品であり、そこには幾つもの年代と、来るべき個体の死と再生の予感に充ちみちた言葉が刻みこまれてあった。僕たちの時代を総括しようとするその最初の努力は、1970年代の丁度中間の年に、きみから僕へと手渡されたまま、この時代の中で消し去られようとしているのだが、そして実際、その紙片は僕の部屋の中でどこへ行ったかもわからなくなってしまっているのだが、僕がいま譲り受けたいと思っているその散文詩の表題はといえは、それは明るいブルーのインクを使った橘素子の伸びやかな文字で―
風のクロニクル、と書かれてあったのだった。