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海外の長編小説ベスト100

 b0138838_22555071.jpg『考える人』の春季号が「海外の長編小説ベスト100」という特集を組んでいる。130名ほどの様々なジャンルの書き手からこのテーマでベスト10を募り、傾斜配点して合計するという手法を用いているため、面白みや意外性には欠けるが、概ね妥当なランキングとなっている。ベスト10に関しては、セルバンテスの『ドン・キホーテ』とメルヴィルの『白鯨』以外、私も既に読んでいた。ドストエフスキーが三作も入るのは当然ではあろうが、ほかの作家を入れたい気がする。もっともこのようなランキングは是非を問うより、欠落に思いをめぐらせる方が楽しい。
 私も自分なりの長編小説ベスト10を示すことにしよう。選定にあたっていくつかの条件を課した。20世紀以降の小説から選ぶ。一作家からは一作として、国に関してもなるべく重複を避ける。国民文学なる概念は今やナンセンスとはいえ、選別の一つの指標にはなるだろう。結果は順不同で以下のとおり。

・マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
・ロレンス・ダレル『アレキサンドリア・カルテット』
・サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』
・フランツ・カフカ『城』
・ギュンター・グラス『犬の年』
・ソルジェニーツィン『収容所群島』
・ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』
・スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』
・ガルシア・マルケス『百年の孤独』
・埴谷雄高『死霊』

 イギリス、ドイツ、アメリカについては二点ずつの選択となった。イギリスについてはいずれも国外を舞台としたエキゾチックな長編であり、ドイツとアメリカは20世紀前半と後半から一点ずつ選んだ。
 順不同とはいえ、プルーストの首位は揺るがないように感じる。フランスでもう一点選びたかったが、『失われた時を求めて』に拮抗する小説を挙げることは困難だ。イギリスからはあえてジョイスをはずした。ダレルもラシュディも大英帝国の「植民地」を舞台としている。グラスは近年の自伝の問題ともつながり、戦争責任を直接に扱った『犬の年』を採ったが、『ブリキの太鼓』と『ひらめ』も捨てがたい。『考える人』の特集でソルジェニーツィンがほとんど触れられていないことは暗示的である。ラーゲリの文学こそ20世紀の最暗黒の象徴であるはずだが、共産主義が崩壊した今となってはもはや忘却されてよいということか。フォークナーは実験的な要素の強い『響きと怒り』を選んだ。個人的には『野生の棕櫚』も捨てがたい。日本についてはなぜ大江や中上でないのか、おおいに異論もあろうが、彼らに対して例えばマルケスやフォークナーがあったとしても、私の知る限り『死霊』に類した小説は日本のみならず海外にも存在しない。
 私のリストのうち、『考える人』と重なるのは、プルースト、カフカ、マルケスである。残りの七作のうち、先に触れた未読の二作を除いた五作、すなわちドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』、『悪霊』、『罪と罰』、トルストイの『アンナ・カレーニナ』、カフカの『審判』(果たして長編と呼べるだろうか)を私は中学と高校で愛読した。逆に私のリスト中で高校時代に読んだのは『城』のみであった。私の若き日の読書遍歴はそのまま19世紀から20世紀にいたる世界文学史に対応していたことに今となって気づいた。
by gravity97 | 2008-04-23 22:57 | 海外文学 | Comments(0)

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