Living Well Is the Best Revenge

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優雅な生活が最高の復讐である

四方田犬彦『クリティック』

このブログを立ち上げるにあたって、「ネームカード」なる設定を求められ、いくつか自己言及的な言葉を入力してみたがいずれも既に登録されていたため、ひとまず「クリティック」を名乗ることとした。「クリティック」とは四方田犬彦が1984年に著した論文集のタイトルでもある。
80年代初頭、『GS』という伝説的な雑誌の創刊に関わり、浅田彰、中沢新一らとともに「ニュー・アカデミズム」と総称された批評家たちの中にあって、四方田は今日にいたるまで精力的かつ多岐にわたる著作の発表を続けている。ヌードのピンナップから漫画、香水にいたる多様な主題を扱った本書はその後の四方田の活動を予示するかのようである。
『構造と力』、『チベットのモーツァルト』といった当時話題となった著作と比べても、私が本書に深く共感したのは、多様な話題を扱いながら多くの論文が記号論の磁場の中にあったからである。当時、私は丸山圭三郎のソシュール研究に導かれ、記号論が切り開く、驚くべき視界に魅惑されていた。
何人かの先達、とりわけロラン・バルトの影響があからさまであるとはいえ、日本において多様な文化的表象を記号論的な観点からかくも犀利に分析する、見知らぬ若手の批評家が登場したことに私は強い衝撃を受けた。四方田の批評については今後もこのブログの中で論じることとなろうが、本書は「ニュー・アカデミズム」の出発点として私の中で今なお新鮮な印象を与える。
それから20年以上が経過した昨年、四方田は師であった由良君美へ対する敬意と哀切に満ちた回想『先生とわたし』を発表した。この中で、私はこの著作が由良によって「全てデタラメ」と否定されたという事実を知る。四方田の出発点は師弟関係の終焉でもあった。
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by gravity97 | 2008-04-17 09:29 | 批評理論 | Comments(0)

優雅な生活が最高の復讐である


by クリティック